1)ストッパーノット
ロープエンドから両腕を伸ばした長さの2倍のところにオーバーハンドストッパーノットを結びます。ダブルブレイドはコアもカバーも共に編み込みロープで、最大の強度を持つようにバランスがとられています。ですからスプライスをする時にはそのバランスを崩さない、言い換えればスプライスした部分にたるみを作らず本来の手触りにより近づけて仕上げることが大切です。スプライスの寸法取りはロープの径により変える必要があります。スプライスを作るためには『たるみ』(4B参照)を作る必要がありますが、そのための寸法ですから長過ぎても短か過ぎてもいけません。
2)カバーの寸法取りとマーキング
チャートに従ってマークします。
(ⅰ) ベリー(埋め込み)の長さ
(ⅱ) クロスオーバーの長さ
(ⅲ) アイの大きさ
(ⅳ) コア/ネックの長さ
(ⅰ)と(ⅱ)はロープエンドから、(ⅲ)は(ⅱ)から、(ⅳ)は(ⅲ)から計ります。
寸法取りチャート
ロープ径 | 8mm | 10mm | 11mm | 11.5mm | 12mm | 14mm | 16mm | |
ⅰ | 22 x | 17.5cm | 22cm | 24cm | 25cm | 26cm | 31cm | 35cm |
ⅱ | 24 x | 19cm | 24cm | 26.5cm | 27.5cm | 29cm | 33.5cm | 38.5cm |
ⅲ | 7cm | 9cm | 9.5cm | 10cm | 10cm | 50cm | 55cm | |
ⅳ | 8 x | 6.5cm | 8cm | 9cm | 9cm | 9.5cm | 11cm | 14.5cm |
*ⅰ、ⅱ、ⅳの寸法はそれぞれ ロープ径 x 22、x24、x8 です。ⅲの寸法は 8mm〜12mmがタイトアイ、14mm、16mmはリギングロープのルースアイを作るための参考値です。
3)カバーテーパーを作るためのマーキング
カバーテーパーの形と長さがスプライスの品質を左右します。チャートに従って長さを決めたら形を決めなければなりません。カバーは規則的に編まれているのでどのストランドを引き出して切ったら良いかは決まっています。24ストランドの場合はマーク(ⅰ)からエンドに向かって8つ目のストランドからマークします。どれも同じ場所から出るペアのストランドにマークします。
24ストランドの場合そこから下記のように数えてマークしていきます。
5つ目のペアにマーク
4つ目のペアにマーク
5つ目のペアにマーク
5つ目のペアにマーク
4つ目のペアにマーク
さらにエンドに向かって5ヶ所マークします。(数えなくても、おおよその間隔で大丈夫です。)
4)コアの寸法取りとマーキング
A) バランスを保ってマーキング マーリンスパイク等のツールを使ってマーク(ⅲ)でカバーを開いてコアにマーク(A)します。注:マークをする前にコアを引き出さないこと。引き出すとカバーとコアの位置がずれてしまいます。コアを完全に引き出してからバランスを直しマークする方法もありますが、コアが捻れないよう気をつけなければなりません。
カバーの形を崩さないためには、楽な姿勢で手の力を抜いて優しくカバーを開いてやることが必要です。マーク(ⅲ)の部分を曲げストランドにテンションを掛けておくと、コアを引き出しやすくなります。
B) 『たるみ』のためのマーキングマーリンスパイクを使ってコアを引き抜きます。コアにマーク(A)から(ⅳ)の寸法のところに2つ目のマーク(B)をします。
C) カバー埋込みのためのマーキングマーク(B)から(ⅱ)と(ⅳ)を足した場所に3つ目のマーク(C)をします。
(例 11.5mmロープの場合:27.5 + 9 = 36.5cm)
5) カバーテーパーを作る
ロープエンドからテープを取ります。ブレイドがほぐれないよう注意して下さい。どうしてもほぐれてしまうようならもう一度テープを付けます。上記 8 5 4 5 5 4 の場所からストランドを引き出し、ならしてから引き出したストランドを切り落とします。カバーエンドにテープを付けホローフィッド等に取り付けます。
6) カバーの埋め込み
コアがねじれていないか確認します。マーク(B)の後ろ側からカバーをコアの中に挿入します。ストランドの間をきれいに挿入して下さい。マーク(C)から引き出します。フィッドをはずしてカバーが戻らないようにコアに縛っておきます。
7) コアの埋め込み
ワイヤーフィッドをマーク(ⅳ)の裏から挿入しマーク(ⅰ)の裏から引き出します。フィッドはカバーとコアの隙き間を引っ掛かることなく通さなければなりません。挿入されていく部分を指先で確認しながら力を抜いて軽くフィッドを押していきます。時々マーク(ⅲ)から出ているコアを引っ張ってワイヤーフィッドがコアに絡んでいないかチェックしてみます。
コアがねじれていないことを確認したらエンドから10cmほどをワイヤーフィッドに掛けます。エンドをほぐしてワイヤーフィッドから2mmほど飛び出した部分を50-60%切り落とします。
ワイヤーフィッドのループを柱など強度のあるアンカーに固定し、コアを引き込みます。マーク(ⅰ)の裏側から引き出します。回しながら引っ張るとカバーに入りやすくなりコアとフィッドはマーク(ⅲ)の内側まで引き込まれます。
ここからコアを引き出す部分は出来ればレントゲンで内部を確認しながら作業したい程デリケートな所ですが、そんな予算はないので細心の注意を払って進めましょう。片手でカバーのマーク(ⅳ)を握り、もう片方はマーク(ⅲ)の近くでコアを握り同時に引っ張ります。ワイヤーフィッドはコアを引っ掛かったりブレイドを変形させずに引き出してくるでしょう。
もしコアが引っ掛かって抜けてこない場合は、マーク(ⅲ)まで一旦引き戻してコアがワイヤーフィッドに掛かった部分をずらして半分に切り落とした部分に掛ければ、もっと細くなって通りやすくなるはずです。切らない部分が切った部分を誘導し中で絡まらないようにしてくれるでしょう。
8) クロスオーバー
クロスオーバーはダブルブレイド クラス1の核心部です。この部分で埋め込まれたカバーとコアが交差して強度を生み出すからです。そのためにクロスオーバーにはこの作業の最後までゆるみを作らないことが重要です。6)で縛ったカバーを解いてカバーとコアを両方同時に引っ張りクロスオーバーをしっかり密着させます。
9) カバーテーパーの仕上げ
カバーエンドからテープを取り残り5ヶ所から2ストランドずつ引き出してカットします。合計で22本のストランドを切ることになります。クロスオーバーをしっかり押さえながらカバーをカバーの中に埋め戻します。
10) コアテーパーの仕上げ
スプライスのネック部分は重要な場所です。コアテーパーがクロスオーバーを保持し圧迫することでスプライスの信頼性を高めるので、コアテーパーの長さはクロスオーバーの長さより若干長めにします。コアテーパーがよりスムーズであればあるほどスプライスの強度は増します。コアテーパーの仕上がりの良し悪しが最終的なスプライスの出来、スムーズで柔軟なスプライスか、たるんでいたり硬いスプライスかを決定します。僕たちは前者を目指したいものです。
マーク1:クロスオーバーをしっかり押さえながらコアをマーク(ⅳ)の方向にならしてから、マーク(ⅳ)から 出た所にマーク(1)します。
マーク2:マーク(ⅲ)の場所を開き中に見えるコアにマーク(2)します。コアをマーク(2)が見える所まで引き出します。コアをマーク(1)で切り下記の方法に従ってテーパーを作ります。
ⅰ) コアのストランドの数を数えます。
ⅱ) マーク2の所でストランドの1/4をカットします。
ⅲ) そこからエンドまで半分の所で1/8をカットします。
ⅳ) 残った半分をほぐしてからエンドに向かって斜めにカットします。
クロスオーバーをしっかり押さえながらカバーをマーク(ⅳ)の方向にならし埋め込みます。
11) 最後の埋め込み
カバーにもコアにもたるみを作らないように最後の埋め込みをしていきます。
1) スリップノットをストッパーノットの後ろに結び強度のあるアンカーに固定します。クロスオーバーをしっかり押さえながらコアにできたたるみをもう片方の手でしごきます。アンカーの反対側にロープを引っ張るとカバーとコアはお互いに反対方向に動きスプライスが埋め込まれていきます。コアにあるたるみがカバーに埋め込まれていくのを確認しながら引っ張って下さい。
2) カバーにできたたるみはアンカーの反対側にロープを引っ張りながらアイの方に優しくしごいて取っていきます。埋め込む時はリズムを作りましょう。テンションーゆるめー埋込み
3) カバーテーパーが埋め込まれていくとネックが硬くなり編み目も詰まってきます。それを防ぐためにはアイをアンカーに固定して埋め込まれた部分を引き戻しリラックスさせます。
4) 完全にたるみがなくなるまで2)と3)の工程を繰り返します。
12) ネックのスティッチング
ダブルブレイドのスプライスでは荷重が掛かれば掛かる程よりしっかりと保持する力が働きますが、スプライスを損なう2つの可能性があります。1つ目はゆるめに編まれたダブルブレイドロープを弱い力で引っ張るとスプライスが抜けてくること、2つ目はアイの近くにたるみがある場合に強い荷重を掛けるとアイが小さくなってしまうことです。そこで仕上げに下記の要領で縫い込みを入れましょう。
ブラインドスティッチ×3
ランニングスティッチ×4
ブラインドスティッチ×3
*ブラインドスティッチとは: 糸を通したら出てきた同じ場所から針を入れて縫い目を隠す縫い方
*ランニングスティッチとは: 縫い目を見せる縫い方